魚を育てる現場から日本とカンボジアをつなぐ 現場へ
高橋会長と歩いた一週間で、改めて感じたこと
私はカンボジアで「南国鯛」の養殖・加工・販売に取り組みながら、一般社団法人日本カンボジア協会(JCA)の理事、カンボジア事務所長として活動させていただいています。
普段の私の仕事は、魚です。
養殖場へ行き、魚の状態を見て、水を見て、加工を考えて、売り先を探す。どうすればカンボジアで育てた魚をもっと多くの人に食べてもらえるのか、日本や世界へ届けることができるのか。
そんな毎日を過ごしています。
その一方で、今回の一週間は、いつもの養殖場とはまったく違う場所を歩く時間になりました。
JCAの高橋文明会長とともに、カンボジア政府の各省庁や関係機関を訪問し、多くの皆様から直接お話を伺う機会をいただきました。
正直に言えば、これだけ多くの政府関係者の皆様と、これだけ集中して意見交換をする機会はなかなかありません。
私自身、本当に勉強になった一週間でした。
9月8日、内務省とのMOU締結
今回の大きな出来事の一つが、9月8日に行われた、カンボジア内務省行政総局と日本カンボジア協会とのMOU締結です。
サー・ソカ副首相兼内務大臣ご臨席のもと、日本カンボジア協会からは高橋会長が出席し、今後の協力に向けた新しい一歩が始まりました。
このMOUの大きな目的は、日本の中小企業がカンボジアで活動しやすい環境づくりを進めること、そしてカンボジア企業と日本企業との連携をさらに広げていくことです
日本からカンボジアへ投資するだけではなく、カンボジアの企業と一緒に事業をつくっていく。
この考え方は、私自身がカンボジアで事業をしている中でも、とても大切だと感じています。
カンボジアで長く事業を続けようと思えば、日本人だけで完結することはできません。
カンボジアの人たちと一緒に考え、一緒に働き、一緒に成長していく。
その積み重ねが、本当の意味での日本とカンボジアのビジネスにつながっていくのだと思います。
フン・マネット首相との面談
9月10日には、ピースパレスにてフン・マネット首相との面談が行われました。
高橋会長から、JCAが今後特に力を入れていく3つの柱について説明がありました。
「職業・技術訓練」
「農業・農産業」
「デジタル産業」
その中で、農産物の加工とともに、ティラピアの加工・国内販売・海外輸出についても話題として取り上げられました。
私は普段、まさにティラピアの養殖を仕事にしています。
ですから、自分が日々現場で向き合っている魚が、日本とカンボジアの新しい産業協力の一つとして首相との面談の場でも話題になる。
これは私にとって、とても感慨深いことでした。
養殖という仕事は、とても地味です。
毎日餌をやり、水を確認し、魚が大きくなるのを待つ。
派手なことはありません。
でも、その魚が加工され、商品になり、国内で販売され、いつか日本や世界に輸出される
そう考えると、養殖場の小さな一歩も、国と国をつなぐ大きな流れの中にあるのかもしれません。
情報、文化、人材育成。それぞれの分野で見えた可能性
今回の訪問では、情報省、文化芸術省、労働職業訓練省をはじめ、さまざまな政府機関の皆様とも意見交換が行われました。
文化芸術省では、日本とカンボジアの映画分野での協力について話が進められています。
カンボジアに残されている古いフィルムをデジタル化し、貴重な映像資料を未来へ残していくこと。
さらに、日本の映画関係者にもっとカンボジアで撮影してもらい、カンボジアの文化や魅力を世界へ発信していくこと。
文化という分野にも、まだまだ大きな可能性があることを感じました。
そして、労働職業訓練省との面談では、人材育成について非常に具体的な話が行われました。
美容分野では、カンボジアの学生が日本で研修を受け、その能力や仕事に対する姿勢が高く評価されているという話もありました。
技術を学び、人が育ち、その人たちがカンボジアへ戻って次の人を育てていく。
これは一度きりの支援ではありません。
人を育てることで、その技術が国の中に残っていく。
私はこの考え方がとても好きです。
日本語教育についても考える機会に
今回、国際交流基金プノンペン連絡事務所にも伺い、日本語教育についてお話を聞かせていただきました。
カンボジアと日本の関係が深くなればなるほど、日本語を学ぶ人材の重要性も高まっていきます。
ただ単に「日本語を覚える」ということではなく、日本で働く人、日系企業で働く人、日本人と一緒に仕事をする人にとって、実際の生活や仕事につながる日本語教育が必要になります。
日本語を学ぶことが、その人の将来の選択肢を広げる。
そして、その人たちが日本とカンボジアをつなぐ存在になっていく。
ここにも、JCAとしてできることがあるのではないかと感じています。
一週間一緒に回って見えたもの
今回、高橋会長と一緒に各省庁を回らせていただき、改めて感じたことがあります。
それは、国と国との関係も、最後は「人と人」だということです。
どれだけ大きなプロジェクトでも、どれだけ立派な計画でも、実際に動かすのは人です。
会って、話して、相手の考えを聞く。
こちらの考えも伝える。
そして、「では一緒に何ができるだろう」と考える。
この積み重ねしかないのだと思います。
これは養殖の仕事も同じです。
魚を育てることも、一日で結果が出るわけではありません。
毎日少しずつ積み重ねていく。
気がついたときに、魚が大きくなっている。
人と人との関係も、国と国との関係も、きっと同じなのだと思います。
日本からカンボジアへ。そしてカンボジアから日本へ
これまでは「日本企業がカンボジアへ進出する」という話が中心だったかもしれません。
しかし、これからはそれだけではないと思っています。
カンボジアで生まれた商品が日本へ行く。
カンボジアの企業が日本へ進出する。
カンボジアで育った人材が日本で活躍する。
そして日本で学んだ人が、またカンボジアへ戻り、新しい仕事を生み出す。
そんな双方向の関係になっていくことが理想だと思います。
私たちの南国鯛も、その一つになりたい。
カンボジアで育てた魚を、カンボジアの人たちと一緒に加工し、この国の商品として日本や世界へ届ける。
まだまだ簡単ではありません。
課題も山ほどあります。
でも今回、各省庁の皆様のお話を直接聞き、カンボジアという国がこれからどこへ向かおうとしているのか、その一端を感じることができました。
だからこそ、私たち民間も、もっと頑張らなければいけないと思います。
今回の一週間、本当に多くの方にお世話になりました。
カンボジア政府関係者の皆様、日本側の関係者の皆様、そして一緒に動いていただいたJCAの皆様に、心から感謝いたします。
私はこれからも養殖の現場に戻ります。
魚を育て、加工し、売る。
私にできることは、まずそこからです。
でも、その一匹の魚の向こう側に、日本とカンボジアをつなぐ未来があると信じています。
南国鯛を通して、カンボジアの可能性を日本へ。
そしてJCAの活動を通して、日本とカンボジアをもっと近くへ。
今回の一週間で学んだことを、これからの仕事にしっかりとつなげていきたいと思います。




コメント